外の様子を用心深く伺いながら拓夢と二戸 梨杏が順番に出てくる。
「兄さん、親父は……?」
「親父、今、芋焼酎で潰れて台所で寝てる」
「まじっで、……!?」
「あぁ。拓夢と親父を俺の車で送りたいところなんだが、今車がないんだ」
「どうして?」
「ちょうど、……車検に出してる」
「兄さん、親父どうしよう?」
「拓夢、俺の着替えが済んだら。俺とお前でタクシーにまず親父を乗せて、一緒にお前の家まで送る。その後、俺は一人になったら、そのままタクシーで学校へ向かうから……」
「うん、わかった」
中村先生が二戸 梨杏に茶色い紙袋を一つ渡す。
「朝ご飯だ」
「わぁーっ、朝ご飯!先生、作ってくれたの?」
目を輝かせて嬉しいそうな顔をしている二戸 梨杏。
「家で食べてもいいし、学校に着いてからでもいい」
二戸 梨杏が紙袋の中を確認しようとすると中村先生が手を止めた。
「二戸、今はまだ中を見るな、時間がないから、先に早く朝の支度をするんだ」
「はーい」と口を膨らませる二戸 梨杏。
「……それから二戸、俺達が出た後、戸締まりをしっかりと頼んだぞ」、と中村先生が身支度をしながら話を続ける。
忙しそうな中村先生。
ーー先生、先生の顔が見られて、梨杏
はやっと安心したよ。
私に朝ご飯を用意してくれていたけれど。
先生は朝ご飯をちゃんともう食べたのかなぁ?



