「どうした?」
「…人魔、って…なに?」
私の言葉に反応したのは、意外にもレンではなくソウシだった。
ガタッと音を立てて、側にあった棚の上の小物を落とす。
明らかに、動揺が見て取れた。
「ソウシ…?」
「す、すいません…。なんでも、ありません」
ソウシは、冷静を装いそう言うけれど、明らかに様子がおかしかった。
何かを、知っている?
「…聞いたことは、ある」
「なんなの?人魔って…、悪魔とは違うの?」
そんなソウシを気にしながらも、レンが答える。
レンは、知っていた。
でも、聞いたことがある程度?
「…人魔とは、悪魔と人間の間に生まれた子。言わば、禁忌の子だ」
「禁忌の…子?」
「ああ。人間と悪魔、種族の違うものは決して交わってはいけない。犯してはいけない法だ」
それでも、それを犯し生まれたのが人魔。
禁忌の子と呼ばれている、人たち。
じゃあ、あの仁という彼も、人間と悪魔の間に生まれた人魔ということ?
見た目は、まるで人間だった。
違うのは髪の色と瞳の色。
「人魔に、会ったんですか…?紗南さまたちを襲ったのは、彼ら、なんですか?」
「え…?あ、…そうだって、言ってた。仁って人で…見た目は本当に人間みたいで…」
動揺を隠せず捲し立てるように尋ねるソウシに、私は戸惑いながら答えた。


