「ミナトのところには、明日にでも顔を出せばいい」
「やだ!私、ミナトの側にいる!部屋になんて戻らない!」
バシン!!!
鋭い痛みが頬を走る。
「いい加減にしろ!」
レンの声が響く。
私は、叩かれた方の頬にそっと触れた。
レンに、叩かれた。
涙でぐしゃぐしゃの顔。
痛みと、悲しみと、動揺で、さらに涙が溢れる。
「お前は、仮にも王妃だ。こんなことで取り乱すな」
「こんなこと…?」
耳を疑った。
“こんなこと”だと言ったの?
ミナトが傷ついたことを?
もしかしたら、意識が戻らないかもしれないことを…?
レンは、変わってしまった?
王様になって何かが変わってしまったの?
「…じゃない」
「なんだ?」
「王妃なんて、なりたくてなったわけじゃない!ミナトの事、“こんなこと”呼ばわりするレンなんて…大嫌い!」
私は泣き叫ぶと医務室を飛び出す。


