「…でも、それじゃあ、ソウシは止めようとしてくれてたんでしょう?だったら、裏切ったとか…」

「いいえ、僕は裏切り者です。最初から」

「どうして…」




きっぱりと言い切るソウシは、どこか怖くて私の知っているソウシじゃないみたいだった。
それは、ここにいるみんなが感じていたこと。




「僕自身、この王国に復讐するために来たんですから」





落ち着いた微笑を浮かべながら放たれた言葉に、声を失う。
ソウシと復讐という言葉がうまくマッチしなくて。
ソウシは、そっと目元に手をやると、少しして顔を上げた。





「…僕は、人魔なんです」





それは、ロイドが教えてくれた。
コンタクトレンズのような、目の色を変えられるもの。
今のソウシの瞳の色は、仁と同じ灰色をしている。

ソウシが、人魔…?




ウソ……。





「僕と仁は、兄弟のように育ちました。いつも一緒で、いつも僕は、仁の人間への恨みを聞いていました。僕自身は、恨みなんて特にない、というよりも興味がありませんでした。人生を、諦めていたんでしょうね」




人魔として生を受けた時から。
ソウシは切なく微笑んだ。



「しかし、仁の母が死に、一層仁の人間への恨みが増し、復讐をすると言い出しました。人間に成りすますことに抵抗のない僕が、人間としてルネス王国に潜入することにしました。自分のためというよりも、仁のために」