「わからない」
私は、吐き捨てるように呟いた。
「なにを信じたらいいの?もしかしたら、あの人がいい人で、あなたたちが私を騙してるってこともあり得るってことでしょう?」
「なにを言ってる」
「だって、そうじゃない!私、覚えてないもん。皆がそうやって言われるから、信じてここまで来たけど…。私が覚えてたのは、あの人の名前だったんだよ。あなたじゃなくて、彼の名前だった!」
そう言うと、レンは傷ついた顔を見せる。
言い過ぎてしまったかもと思った時には、もう遅かった。
でも、わからなくなった。
なにを信じていいのか。
だって、悪いことをするような人に見えなかったよ。
「ごめん…」
私はそう言い残すとレンを残して走り去った。
なにが本当で、なにが嘘なんだろう。
それとも全部ウソなのかな。
私の気持ちは不安定だ。
少し前までは、今の状況を楽しもうって思ってたのに。
でも、あと一人私には会わなくちゃいけない人がいる。
私の記憶を消した、人魔という人に。


