どうしてあんな優しそうな人が、こんなところに閉じ込められているんだろう。
私はそっと檻を掴み、なるべくその檻に近づいた。
「…ソウシ…?」
恐る恐る声をかけると、ピクッと動いた肩。
ゆっくりと見開かれる瞳は、まっすぐと私をとらえた。
その瞳が、揺れたのを、感じた。
「紗南…さん…?」
消え去りそうな震える声で名前を呼ばれ、胸が締め付けられるよう。
どうしてみんな、そんな風に私を呼ぶんだろう。
「紗南さん…、どうして…」
ゆっくりと近づく彼が、歩くたびにジャラジャラと足に繋がれた鎖が鳴る。
その音を聞くと、頭がズキンと痛んだ。
「ああ…本当に、紗南さんなんですね…」
「…はい」
「髪が…こんなに短くなって…ああ…」
「髪…気づいたら短くなってたんです。…あなたが知ってる私は、髪長かったのね」
とても、大事な人を見るような瞳で、見つめる彼は、なにをしたというの?
こんなにも、私を想ってくれている。
そんな彼を、こんなところに閉じ込める理由は、いったいなんだというの?
「あなたに、会いたかったんです…」
「え…?」
「…思い出したいから。私が忘れてしまってること…」
私がそう告げると、彼は寂しそうに笑った。


