「ソウシって人に会いたいの」
レンと二人になった時、私はそう言った。
レンは戸惑う表情を見せ、答えない。
最初、私が口にしたときも眉をピクッと動かしただけでなにも言おうとしなかった。
何かを隠しているんだってことだけはわかった。
でも、その彼がどういう人なのかわからないし、私にとってどういう相手なのかもわからないからどう憶測したところで答えなんて出ないんだ。
だから、正直にレンに聞こうと思ってそう尋ねた。
「今、会う必要はない」
「なんで?だって、私の口から自然と出た名前なんだよ?近しい人なんじゃないの?例えばほら、ミナトとかリュウとかみたいに」
「それを、今知る必要はない」
「どうして?そんなこと、なんでレンが決めるの?私の心が覚えてたんだよ!あの場所にいないことが不思議に思うくらい自然に!」
「…それは」
「きっと、リュウは今は他の国の王様だから、あそこにいなくても自然だったんだよ。でも、そのソウシって人はあの場所にいないことが不自然な立場の人なんじゃないの?」
ずっと考えてた。
どうしてあの時、私はそう言ったのか。
そのあと出会ったリュウではなくて、ソウシという人の名を呼んだのか。
それって、私にとってはとても大切な人なんじゃないの?
ミナトたちみたいに“仲間”と呼べるくらい大事な…。
それなのに、どうして隠そうとするの?
「私には、ソウシに会う権利はあるはずよ!」
「……わかった」
レンは眉を顰め、渋々と言ったようにうなずいた。
少しだけ、怖い気もする。
ここまで拒まれた人に会うんだ。
それが、どういう人であっても、私は覚悟を決めなくちゃ。
知るって決めたんだから。


