「なぜ、泣いてる」
レンは、私の泣き顔を見逃さず、私の腕を掴んで引き止めた。
私は、その腕を振りほどこうと腕を動かすけど、男の人の力には敵わない。
「泣いてないよ」
「ウソつけ」
「ウソじゃない」
私はそう言いきる。
泣いてるなんて、思われたくない。
悔しい想いも、知られなくなんてない。
だって、この人が見てるのは、私じゃない。
「放して!」
強引に腕を引くと、ようやく放された手。
私は、走り出して城の中に入った。
階段を駆け上がっていく。
なんで、こんな心が乱れるの?
あいつがどんな私を見ていたって関係ないのに。
私は、別にあいつにどう思われたって、関係ないのに。
「わ、紗南ちゃん?」
階段を登りきったところでミナトとぶつかった。
私はそこで、ミナトに泣きついてしまった。
わんわんと声をあげて泣く私を戸惑いながら慰めてくれるミナト。
ミナトだって、私じゃなくて違う私の事を求めてるのに。


