シオンくんが案内してくれたのは、さっきミナトとも来たテラスと、大広間。
そして、大浴場だ。
大浴場なんて、大きなライオンの石造の口からお湯が出てくるんだから、もう感動。



私は一人ウキウキと大はしゃぎで歩き回る。
隣でシオンくんは浮かない顔をしてるけど。
なんか、悪いことしちゃったかな?




「あ、紗南さま…そっちは…」




城から出て城の周りを歩こうとしていた私にシオンくんが声をかける。
私は首をかしげながら振り返る。



「なあに?」

「あの…、そろそろ部屋に戻りましょう。そろそろご飯を呼びに来るころです」

「…この先を見てからでもいい?」

「え…」



私は、シオンくんの返事も聞かずに歩き出す。
そこは、たくさんの花が植えられた中庭だった。


でも、そこの一角にはそこだけぽっかりと穴が開いてなにも植えられていない場所があった。




「もったいないね、ここだけ…」

「…紗南さまがケガを追われたのはこの場所なんです」

「え?」

「ここで、花壇が爆発し…紗南さまは…」





ああそうか、だから、ここに来ることを止めようとしたんだ。
私はシオンくんに移した視線を花壇に戻す。




…なにも思い出せない。




ふと見れば、確かに足元には落ち切れていない血痕のようなものがついている。
ここで何かがあったのは確かだ。



でも、なにも思い出せない。