でも、今は。
かっこ仮だった当時より、確定の肩書を持ってしまった今は。


いくら私がわがままを言おうが、仕方ないとあきらめざるを得ないことの方が多い。


年上の人に敬語を使われたり。
こうして、かしこまられたり。





なんだか、寂しいと思うこともある。




でも、決めたのは私なんだ。
姫としての人生を選んだのは私。





「あなた、名前は?」

「…ユキにございます…。一週間前からここで働かせていただいてます…」

「そうなの。少しは慣れた?」

「あ、はい…。仕事は、楽しいです」





顔を赤らめながら俯きがちに答える。
私はにっこりと笑う。




「よし。このランプを替えるのよね」

「え?あ、はい…」




私はランプを見上げる。
そして、脚立をその下に立てると、その脚立を上っていく、





「お、王妃さま!?」

「貸して?私のほうが背が高いし、ほら、私でもギリギリなんだもの、ユキちゃんじゃ届かないわよ」




脚立の一番上に立ち手を伸ばして見せた。