「ウソじゃないよ、だって、俺。確認しに行ったからね、君の髪を持って。でも、意味なかったんだ。だから持って帰ってきたよ、ほら」
斜めにかけてあったカバンの中から取り出されたのは、私の髪の毛。
意味なかった…。
これを、渡す相手が、いなかったから…?
「だからね、もう城に戻ってもレンはいないんだよ。君の大好きなレンは」
「いや…そんな…」
「だって、見ただろう?レンの身体から流れていく血。どんどん溢れていって…」
「やめて!もう…」
「忘れたい?忘れたいよね、うん。忘れちゃおうよ」
仁の声が、なにも考えられなくなった私の頭に直接響いてくる。
忘れる?
忘れたら、楽になる?
「楽になるよ。俺が、楽にしてあげるよ」
仁の手が、私の目に添えられる。
私はそっと瞳を閉じた。
「なにもかも、忘れてしまえばいいよ」
声が、響く。
私の意識は、深く深く落ちていった‥‥‥‥。


