気づかなかっただけ。
こんなにも、愛されていたのに。
「ミナト…、これから返していこう。ウィルさんに、親孝行しなきゃね」
「…っ、うん」
たった数年だったかもしれない。
でも、それでも確かに父だったんだ。
血は繋がっていなくとも、種族の違いがあったとしても。
「帰ろう、ミナト」
「うん」
泣き笑いのミナトが顔を上げる。
憑き物が落ちたようなすっきりした表情。
私は、なんだかうれしくなってミナトの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「わ、紗南ちゃん。やめてよっ、もう子どもじゃないんだから!」
「いいの!やらせなさい!」
私も嬉しい。
ミナトがこうして笑えている今が。
「紗南を抱きしめたって、レンが知ったら…オー、こわ」
「ちょ、リュウ!やめろよな!そんなんじゃないから!」
「事実は事実だしなー」
リュウは茶化すようにミナトに突っかかる。
ミナトは慌ててリュウを止めようと言いあっている。
あ、なんだかいつもの二人だ。
それが、なんだかうれしくて止めに入るのを少しためらった。


