「ミナト…?」
ウィルさんが、その名に反応した。
ミナトの瞳が揺れている。
「いや、ごめんね。昔、少しだけ一緒にいたその子どもに、君と同じ名前を付けたんだよ。何と呼ぶか悩んでね、勝手につけてしまったわけだ」
「3日ぐらい悩んでたッすよね!」
「はは、名づけなんて初めてだったからね。でもまぁ、その子どももすぐに姿を消してしまってね。今ではどこにいるのか。無事に育っていれば、そうだね、君と同じくらいの歳かな?」
疑惑が、確信へと変わっていく。
この人は、ミナトを育てたという悪魔だ…。
ミナトという名前をくれた人。
「あ、あの…、」
「生きているのかな。もしかしたら、死んでいるかもしれないね。…生きていたとしても、おそらく、ミナトとは名乗っていないだろうしね」
そう言ったウィルさんが、少しだけ寂しそうに見えた。
なぜ?
私は、ウィルさんになにを言おうとしているんだろう。
ミナトを見た。
ミナトは、視線を泳がせ、動揺している。
それもそうだ。
だって、目の前に自分を育ててくれた人がいるんだ。
会いたいかどうかはわからないって言ってた。
怖いとも。
ウィルさんにどうしてミナトを育ててくれたのか、聞くのが怖いと。


