「生まれてすぐ捨てられて…まだ首も座らない赤子だよ?ひどいよね」

「そんな…」

「どんな理由があったかなんて知らないし、知りたくもないけど」



捨てる理由なんて、聞きたくもなかっただろう。
そんなことを聞いたところで、なにも変わらないのだから。




「捨てられた俺を、拾って育てたのはね、悪魔だよ」

「―――え?」



思わぬ言葉に、私は固まった。
悪魔が、育てた?
ミナトを…?



「もちろん、そんな事覚えてないけど、まぁ、酷かっただろうね。悪魔の子育てなんて。それも、人間の子を」

「殺され、なかったんだね」

「それだけは、幸運だったのかもね。その悪魔は、多少の温情はあったみたい。悪魔なりに俺を育ててくれていたんだって」

「そう…」




人間の子ども。
下手したら、殺されてもおかしくはなかっただろう。




「俺は4歳まで悪魔の手によって育てられたよ」

「4歳…」

「だから、その頃の事は覚えてる。…いい思い出として」

「いい思い出?」




私は首をかしげた。
それは、幸せだったということ?
悪魔との日々は、ミナトに幸せをもたらしてくれたの?