「私の国…なにが、聞きたいの?」
「いろんなこと。紗南ちゃんの国には、王様とかいるの?」
「王様…、はいないかな…。でも、外国には王様がいるところもあるみたい。でも、私が住んでいた国は、王様はいないよ」
「へえ。いろんな国があるんだ」
「うん。ここみたいに、みんな同じ言葉では話してないの。国それぞれに言葉があって、英語とか、スペイン語とか…いろいろ。だから、国が違う人とは言葉が通じないこともあるんだ」
私なんて、英語は全くできないから、街で外国人に話しかけられても混乱して慌てふためき、逃げちゃうもんね。
ミナトは、へえ!と感嘆符を並べながら、興味津々に聞いていた。
「私の住んでいるのは日本っていう国なの。戦争をしている国はあるけど、日本は戦争がなくて。悲しい事件はたくさん起こるけど、でも、平和だなって思う」
「うん」
「朝が来て、学校に行って、友だちと騒いで勉強して。親と喧嘩したり、部活をしたり…。そんな日々が、当たり前に続いていくの」
それが当たり前で、きっとずっと続いていくもんだと思っていた。
進学をして、就職をして結婚をして…子どもができて。
皆が当たり前に進む道を私もきっと進んでいくんだと。
でも、違った。
「でも、当たり前なことなんてなかった。私はこの世界に来たし。こうして今、この国で王妃なんてやってる。不思議だよ」
「後悔…してる…?」
ミナトの表情がこわばっていた。
きっと、聞くのが怖いんだ。
私の答えを聞くのが…。


