やっと昼休憩。案の定、噂の転校生はみんなの注目の的になっていた。
田舎の学校で滅多にない転校生。しかも、金髪、イケメンというのだから仕方無い。
千夜の机の周りには女子が群がり、次々と質問攻めにしている。
「ねぇねぇ、前居た学校ってどんなとこ?」
「千夜君って彼女いるの?」
千夜の机の周りという事は、隣の席である綾香も、自然と人だかりの中心になる。
(ど、どうしよう・・・ななみたちとお昼食べる約束してるのに・・・)
「ねぇ、千夜くーー!」
突然、ガタッという音が隣から聞こえる。
「悪い。俺、昼食べたいから後にしてくれない?」
見ると、千夜が立ち上がり、こちらを凝視している。
「千歳さん・・・だよね?俺、学校の事とか分かんないから食堂まで案内してよ」
そう言うと、千夜は綾香の手を掴んで、スタスタとドアのところまで歩き出す。
「え、ちょ・・・」
綾香は困惑しながらも、手を引かれるままに教室を出る。
無言のまま廊下を歩く千夜。
「あの・・・千夜君、食堂はこっちじゃないーー」
廊下の角を曲がったところで、初めてこちらを見る千夜。
「悪かったな、巻き込んで」
「ーー?」
「どうやってあの場から逃げ出そうかと思ってたんだ。助かったよ。」
少し疲れた様子で話す千夜。
「そういうことだったの!」
「びっくりしたよ、急に連れて行くから!」
ほっとし、胸をなでおろす綾香。
「それじゃ。」
そう言って、くるりと踵を返し歩き出す。
(金髪だし不良かと思ったけど・・・そうでもないのかな・・・)
「あ、俺午後から早退するから。適当に誤魔化しといて。」
振り向きざまにそう言うと、千夜は本当に校門を出てしまった。
(やっぱり不良だーー)

