学校を出た俺と健二は、真っ直ぐ家へ向かっていた

光城と出会した事には何か意味があると捉え、健二が帰宅を促したのだ


「別に大丈夫だろー
何もねぇって」

「まぁたお前が喧嘩に巻き込まれたらもう停学じゃ済まねぇぞ?
そしたら俺、お前がいない世界でどう生きれば…!」

「大袈裟だっつの」


泣いたフリをした健二に小さく笑うと、別れ道が見えてきた

それを確認した健二も「また明日な!」と俺に手を振って帰路を歩いていく

また明日…

また明日になれば、平和な日が始まる

それは嫌だ

つまらない


それなら一層、何か事件を捜してみるか?


「…なんてな」


自問自答で鼻で笑った俺は、踵を擦らせながら歩き始めた

夕方のこの道はどこか寂しげで、人もいない

それさえ平和的でくだらなくて…

俺は気を紛らせる為にヘッドフォンを耳に宛がった

でも別にそれは音楽を聞く訳じゃない

五感が鋭い俺に取ってそれは自ら鼓膜を裂くようなもの

だからこれは耳栓変わりと言える


「…五感が優れている事にメリットなんてないよなー」

「…おい…おい!」


…何だ?

ヘッドフォンを宛がった耳に聞こえてきたのは男の声


「なぁ!そこの兄ちゃん…!」


住宅の塀の隙間から人影が見えた

目を凝らして見ると、身窄らしい格好をした男が必死に俺に声を掛けていた


「………」

泥臭い顔や所々破れた服の布地はホームレスの様である

そのまま立ち去ろうとした俺だったが、怯えている様子の男が塀の間から顔だけを出して叫び出した事に思わず足を止めた


「なぁ、待ってくれ!
お前もGeeksなんだろ!?なあ!?」


…な…んだ、コイツ…


「助けてくれよ!
このままじゃハンターに殺られる…!
お互いGeeks同士助け合おう!!」



.