「…あれ、光城先生?」


時雄達が去った廊下に尚も立ち尽くす光城に、体育教師は目をキョトンとさせながら声を掛けた

しかし当の本人は一切目を合わせずに廊下の先を見つめ続けている

口から溢れる咀嚼音はクチャクチャと大きさを増し、体育教師の顔を歪めさせた



「…仲井先生
今日の体育で一刻君が遅刻して来たそうですね」


漸く口を開いた光城であったが、目線は矢張何処へ

不気味に感じながらも同業者である男を毛嫌う事が出来ず、体育教師は作り笑いを浮かべて返事を返した


「えぇ
アイツには全く困ったものですよ
幾ら注意しても直らなくて」

「そうですか
…罰則として外周100周を言い渡したそうですが、本人はどうでした?」

「え?まぁ…嫌々やってましたが、終わった時にはケロッとしてましたよ
アイツ、体力面だけは立派ですからね」


ははは、と笑った体育教師にたいして返事はなく、光城は口角を上げて歩き出した

その顔は何かを確信した顔付きであり、普段の不気味さを更に増していた



「…プランを変えるか…」