「…光城か」


担当科目 理科 光城 照義(こうじょう てるよし)

常に俺を監守する気味の悪い教師だ

俺が喧嘩に巻き込まれる時には何故かいつも近くにいて、手助けをする訳でもなく笑って見ている

…俺自身、警戒すべき相手だと分かっているが

アイツからは¨匂い¨がしない

並みの人より五感が優れている俺は人の匂いに敏感で、人間独特な血生臭さを和らげる為にマスクをしている

それなのにアイツから漂う物は何もない

無味無臭とも言える

だがそれは健二も同じだった

何がそうさせているのかは分からないが、俺は勝手に信頼できる物からは匂いがしないと思っていた


…じゃあアイツは一体何なんだ?



「行こうぜ、時雄」


先を行く健二に頷いて見せるものの、数メートル後ろに立ち尽くす光城は、俺から視線を反らない

嘲笑いを浮かべては、いつもの咀嚼音を廊下に響かせていた


「時雄」

「…あぁ」