「………ひっ…ひぃい…!!」


ホームレスの様な形をした男が、粉々になった塀の間に小さく踞っている

その背中に片足を乗せて無表情に男を見下ろすのは、金色の髪の女だった


「たす、助けてくださいぃ…!!」

慈悲を乞う男の背中からメキメキッと背骨が軋む音がした


「ひぎっ…!?」

「助ける?あんたを?何の為に?」

「やっ、やめ…っ!」


女が更に踏む足に力を入れた瞬間、男の悲痛な声と共に¨ボギッ¨と言う生々しい音が轟いた

そして倒れて動かなくなった男の頭を非道に蹴り飛ばした女が、ふと視線を切り替えた



「………あんた何してんの?」


蒼色の瞳に写るのは、微かに笑いを浮かべる俺だった


「…今、殺した?」

「さあ?」


軽く首を捻った女は夕陽に輝く前髪を掻き上げて小さく息を吐く

その足元に転がる瓦礫の欠片に、俺は唾を飲み込んだ


もしかして、この女が塀を粉々にしたのか?

武器も何も持ち合わせていないのに、どうやって?

それにさっき男の骨を折った時、全く力が入っていない様に見えた



「な、なぁ
お前一体―――」


女の細長い足が瓦礫の破片の上を踏み込んだその瞬間


「お願いだから、¨また¨忘れて?」


2メートル近くあった距離を飛び越えて、俺の目と鼻の先に移動していた


「ま、また…?」


ドスッ


鈍い音がした

それと同時に鳩尾に猛烈な激痛が走り、俺は膝から崩れ落ちた


最後の瞬きをした時に見えた視界の端には、不気味な笑みを浮かべる光城がいて


やっぱりお前がいんのかよ、と思ったのを最後に

俺は意識を失った