「…くだらねぇ」


この世界は平和でしかなくて

退屈凌ぎになる事も見当たらない


真昼の公園のベンチにて、足を開きながら頭を項垂れる俺は苛立ちで足を揺する


日差しが集中する背中の暑さ

ウザい

キャンキャン吠える散歩中の犬

ウザい

井戸端会議の奥様方の声

キモい


あー…

何でも良い


何でも良いから俺を楽しませてくれよ


こんな世界は退屈以前に、窮屈だ



「……はぁ」


徐に顔を上げた俺は顎に下ろしていたマスクを顔に被せ、鼻先にかかる眼鏡のブリッジを中指で上げてから気怠げに立ち上がった

肩に掛けた空っぽの鞄の重みは全く無い筈なのに、大岩を担いだ様な気にさせる

それは今から向かう場所に行きたくない心境からである