Black World

遂に、相手も強行突破と来たか。


「絢瀬(あやせ)!!」


そう部屋の中に入って来た母親が、私の名を口にする。


「・・・おはよう」

「おはよう。じゃないわよ。何普通に挨拶してるのよ!!」


私とは裏腹に、1人興奮している母親。


「母さん。少し落ち着けって」


そんな母親のことを宥めたのが、7つ上の兄、千歳(ちとせ)だ。


「千歳も、おはよう」

「おぉ」


千歳は母親と違い、落ち着いた面持ちで挨拶を返す。


「千歳も、お父さんも、絢瀬に甘すぎなのよ!!」


ムッと頬を膨らませ、口を尖らせる。


そんな母親の仕草に、娘ながら、可愛いな。と思ってしまう。