Black World

どうやって戻ってきたのかわからないが、目を覚ますとベッドの上にいた。


手から伝わる温もりを辿れば、そこには母親の姿があった。


あれは、夢?


一瞬そんなことを思ったが、ジンジンと痛む拳が否定する。


夢じゃ、ない。


そう、残酷な現実を私に突きつける。


少しだけ冷静になった頭で、私は言い訳を並べる。


事故の影響で、一時的に来陽は忘れてるだけかもしれない。


そうだ、一時的なこと。


きっと次に会った時、来陽はまた私の名を呼んでくれる。


そう、思いたかった。


そう、信じていた。


だけど来陽は、覚えていなかった。


思い出してくれることもなかった。


私は退院した後も、来陽の元へと足を運んだ。