Black World

私は逃げるように病室を飛び出し、廊下の端で崩れるように座り込む。


現実が受け止められなくて、ただ涙が溢れる。


私は今、悪い夢を見ているんだ。


そう言い聞かせても、ダマせない心が痛む。


怒りにも似た、ぶつけようのない痛みを吐き出すように廊下を何度も拳で叩く。


「佐倉さん!!」


そんなことをしていた私を見つけた看護師が、慌てたようにこちらへと駆け寄る。


「何してるの!止めなさい」


血だらけの拳を見て、止めるために看護師は腕を掴む。


そんな言葉も、ロクにあたしの耳には届かない。


「大丈夫、大丈夫だから」


看護師は落ち着かせるように、私の背中を擦ってくれた。