Black World

「だけど黒虎の人間だって知られて、拒絶されるのが怖くて出来なかった」


あの時に知っていたら、きっと私は来陽のことを突き放していただろう。


「でも忘れられなくて、気付いたら絢瀬のこと待ち伏せしてた」


そう、だったんだ。


「一目見たら、ちゃんと諦めるつもりだった。だけど絢瀬の顔を見たら、諦めるどころか欲しくなった」


来陽は包むように優しく、私の手を握る。


「ごめん」


その謝罪が何に対するものなのか、私にはわからない。


ただ素直に打ち明けてくれた来陽を、何も話さない私に、責める権利がないことだけはわかった。


そんな私の手を、来陽はギュッと握る。


その手が、少しだけ震えていたような気がした。