Black World

「絢瀬」


そう、今度は私が自分の名を名乗る。


「あやせ?」


来陽は繰り返すように、私の名を口にする。


「下の名前は?」


よく間違われるが、それが私の名だ。


「絢瀬。苗字は、佐倉」

「苗字の方が、名前みてぇ」


愉しそうに笑みを漏らし、来陽は私の名を繰り返し呼ぶ。


生まれてから、ずっと呼ばれてきた名。


だけど来陽に名を呼ばれると、不思議と特別な名のように聞こえる。


来陽には言ってなかったけど、たぶん、、、


来陽に初めて名を呼ばれた日から、私は少しずつ来陽に惹かれていったんだと思う。


何もかもが初めてで、これが恋だと気付くのに時間が掛かった。