Black World

男の言葉が腑に落ちない私は、ただただ男の様子を伺う。


「強いて言うなら、新鮮だった」


新鮮?


「どういう意味ですか?」


男の言葉の意図が理解できず、尋ねる。


「誰かと対等に話したの、久しぶりだった。媚売る奴か、特別扱いする奴ばっかだから」


そう口にした男は、何処か淋しそう見えた。


孤独に嘆き、苦しみ、必死にもがいて居るようにも見えた。


そんな男に、少しだけ興味が湧いた。


「名前」

「名前?」


意味がわからない。とでも言いたげな視線を向けられる。


「あなたの名前」

「俺の?」


驚いたように聞き返し、フッと笑みを溢し


「来陽」


そう、男は名乗った。