Black World

一瞬、躊躇したが


「お邪魔します」


私も部屋の中へと足を踏み入れる。


無駄に広い部屋の中を、様子を伺うように見渡していると


「座れば?」

「結構です」


自分の隣に座るよう促すが、それを断る。


「すげぇ警戒されてるし」


小バカにしたような男の態度に、嫌悪感丸出しで視線だけを送る。


「君。俺のこと、何処まで知ってる?」


そう聞いた男の顔は、どこか淋しげに見えた。


「何も知りませんけど。そもそも、知り合いじゃないですし」


そう答えれば、男は一瞬驚いたような顔をし、嬉しそうに頬を緩ませた。


「変だと思ったけど、知らねぇんだ」


人のことを、変。って、失礼な男。