Black World

「忘れんのは、俺じゃねぇだろ」


まるで全てを知っているかのような成瀬の言葉に、都合が悪くなる。


「どういう、意味?」

「間宮と、付き合ってたんだろ?」


ほら、成瀬は知ってたんだ。


"付き合ってた"


成瀬の言葉に、胸がチクりと痛む。


私は、何に傷ついているのだろう。


来陽との関係を知られたこと?


それとも、過去として語られたこと?


何も答えない私に愛想を尽かしたのか、成瀬は教室を出て行こうとする。


そんな成瀬の腕を、私は咄嗟に掴む。


他でもない私自身が、そんな自分の行動に驚く。


「無理に忘れるは必要なんてない。いつか必ず、過去になる」


成瀬は振り返り、捕まれていない手でポンポンッと頭を撫でる。