Black World

「私、何処で間違えただろう」


独り言のように、自然とそんな言葉が漏れた。


何処で間違えたかわからないから、何処からやり直したら良いのかもわからない。


「間違えない人間って、そもそも居るのか?」


え?


「俺は、いつも間違ってばっかだけど」

「成瀬が?」

「みんな、そんなもんだろ」


そんな何気ない成瀬の言葉に、少しだけ心が軽くなる。


「それに間違いにすら、気付けない奴もいるんだ。気付けただけ、間違った意味はあったんじゃねぇ?」


、、、意味。


「綾瀬」


成瀬に名を呼ばれ、静か顔を上げる。


そんな私の顔を見て、成瀬は涙の痕をそっと撫でる。