手の主は何も言わず、何も聞かず、ただ優しく頭を撫でる。


まるで幼い子供をあやすように。


泣いていることに、彼も気付いているだろう。


でも聞いてこないのは、彼の優しさ。


みんな、彼を誤解している。


『愛想も、協調性もない』


そう言う人もいるが、それは本当の彼を知らないからだ。


だが当の本人も、わざわざ誤解を解く気なんてないのだろう。


それでも、何故か彼の周りには人が集まる。


でも利口な彼は、外面しか見ない人間に媚びようとはしない。


むしろ、突き放す。


そんな彼に、私はどこまで踏み込むことを許されて居るのだろう。