「…海…何?」
「…八重、ごめん。
別れて」
予想もしていなかった言葉が、唐突に頭を巡る。
別れて。
その一言で、
あたしの初恋は、結構あっけなく終わった。
………………
「…ぐすっ、うわぁん…」
もう、十五分もたつのに涙が止まらない。
だって悲しいんだもん。
悲しすぎるんだもん。
八重歩架、たった今初恋で掴んだ彼氏、海との恋が終了しました。
まだ付き合ってちょっとなのに。
「別れて」の一言で、あたしはこんなダメージを食らった。
今は授業サボって、ベランダで号泣中。
顔も目も真っ赤で髪はぐしゃぐしゃなまま、泥で汚れた地面にぺたんとしゃがみこんで、ただただ叫んでる。
まだぐすぐす言っているけど、これでも静かになった方だ。
フラれて直ぐなんかは、呼吸が出来なくなるほど涙が絶えなくて、頭の中が真っ白くなってて…。
そんな感じ。
海の馬鹿!ずっと思い続けてやっと付き合えたのに、なんですぐに振ったの?
…ホントは好きなんかじゃなかったのかな。
気使わせちゃった?
ならなんで言ってくれないの?
あぁ!もう!
諦められないよ。
だってずっと、三年間も好きだった。
毎日海のことばっか考えてた。
告白だって、ずっと言えなかったけど、頑張って言った。
初めて本気で好きになったのに。
口だけの好きな人じゃないんだけど。
海はホントの恋を知らないのか…
だから簡単に付き合えるんだよね。
好きって気持ちで遊ぶような人だったんだ。
「もうちょっと大人にならないかな…なんて…。」
海が恋を知らないのは事実かもしれないけど、これはただの海への八つ当たりだ。
ただ自分の好きになってもらえるような努力が足りなかっただけ。
いけないのは、自分
…なのに、あたしは自分の心臓を押さえるように、胸に手を押し付けていた。
わかっているけど、まだズキズキしている。
もう、こんな辛い恋はしたくない。
恋なんてそんなものだと言われたらそれまでだけど。
「あぁ…さて、どうしたもんか。」
いま悩んでいるのは恋の行く末ではない。
真っ赤な顔と目をどうするかだ。
これじゃ教室に帰れないじゃないかぁ!