彼と私と秘密の欠片


……あれ?

そういえば、何で私、ここで慶太君と居るんだ?


慶太君を釣る(って言ったらアレだけど)ためにドーナツを作ったけど……


あれ……?


「あっ!」

思い出して、私は大声で叫んだ。


そうだ! 私、誠司さんの実家に行くところだったんだった!

慌てて公園にある時計を見ると、時計の針は、四時半を過ぎたところを指していた。


「ぎゃー!」


過ぎてる! 完璧過ぎてる!


私は慌てて鞄から携帯を取り出した。

待ちうけ画面を見ると、不在着信が三件……


誠司さんの実家からが二件と、郁子さんの携帯からが一件……つまり、全部郁子さんからだ。


私はすぐに誠司さんの実家のほうに電話をした。


コールが二度鳴り終わったところで、郁子さんが出た。


「はい」


「あっ、もしもし。雛子です」


「雛子ちゃん?」

郁子さんの声が大きくなった。


「どうしたの? 四時過ぎても来ないし、連絡もなくて電話しても繋がらなくて……何かあったの?」

 郁子さんは心配そうに聞いてきてくれた。


「すっ……すみません」


うわー。どうしよう……公園で遊んでて忘れてましたなんて口が裂けてもいえないし……


あ、でも慶太君と一緒って言ったら……


「でもよかった。連絡とれて……あ、だけど慶ちゃんも遊びに行ったきりで帰ってこないのよ。どこ行ったのかしら」

丁度よく慶太君の話になってくれた。


「あの、慶太君でしたら……」

一緒にいます、と言おうとした瞬間、膝の上に重みを感じた。

下を見ると、慶太君が私の膝の上に倒れこんでいた。


「え……」

覗き込んでみると、慶太君は私の膝に突っ伏して、眠ってしまっていた。