それから数日後。
私はまた誠司さんの実家に行くことに。
一つは、郁子さんに借りてたTシャツを返すため。それで私もTシャツを返してもらう。
誠司さんは忙しくて、私が誠司さんに会って返すより、私が誠司さんの実家に言った方が早いということになった。
そして、もう一つ。
今日こそ、慶太君に心を開いてもらう。
そのつもりで、手土産にドーナツを作ってきた。
味とかトッピングとか、ちょっと手をかけて工夫したつもり。
栄太君が私に関して興味を示してくれるのは、私が作ったものに対してだけ。
それなら、そこからちょっとずつでも、私自身に心を開いてくれれば、と思って。
題して『心を掴む前に胃袋を掴め! 作戦』!
……まあ、わざわざ題する必要のないことだけど。
今日は、学校帰りに誠司さんの家に向かう。
学校の授業が、予定より早く終わっってしまった。
最寄の駅から、誠司さんの実家に向かいながら、携帯で時間を確認すると……まだ三時過ぎ。
四時に行くって約束だったけど、これじゃ三時半前には着いちゃうよ。
どうしよう。一旦家に帰れないこともないし……
そんなことを考えながら、足は誠司さんの実家の方に向かっている。
でも、家に帰るにしても、誠司さんの家の辺りを通るんだよね。
だから、ちょっと早くても、その方が面倒くさくはないし……
んー……どうしよう。
そうだ。郁子さんに連絡してみよう。
携帯の電話帳から誠司さんの実家の番号を表示して、通話ボタンを押そうとした時。
通りがかった公園にふと視線を向けたら、そこに見えた人影に目を奪われた。