そのとき、衾がゆっくりと開いた。
「あ、雛子ちゃん、起きたのね。……栄ちゃんも」
郁子さんがそこに立って、私達を見下ろしていた。
「すっ……すみません! 私、寝ちゃって……」
私はすぐに起き上がってその場に正座した。
「ううん。いいのよ。栄ちゃんも大人しく寝ててくれたみたいだし」
郁子さんは笑顔で部屋の中に入って、栄太君の側に座って栄太君を膝に乗せる。
「それより、もう六時だけど、時間大丈夫? そろそろ起こそうと思ってきたんだけど……」
「あっ……はい、いえっ。そろそろ帰ります!」
混乱した私は変な受け答え方をしてしまった。
でもそろそろ帰らないと……
「そうだ。雛子ちゃんのTシャツ、洗濯したんだけど……まだ乾燥中なの」
「あっ……」
思い出した。
そのまま持って帰ろうと思って、帰るまで脱衣所のところに置かせて貰ってたんだ。
「すみません! わざわざ……」
私が寝ている間に、洗濯をしてくれていたのだろう。
なんて申し訳ないことを……
「ううん。いいのよ。でも、今日はそれで帰ってくれる? おばさんのTシャツで悪いんだけど……」
「いえっ……そんなことないです! あ、私も洗って返しますから!」
「ううん。こっちこそいいのよ、そんなの。雛子ちゃんのTシャツは……どうしましょ。誠司にでも預けといた方が早いかしら」
「あ、はい……私も、また誠司さんを通して連絡しますので……」
なんだか、寝起きの頭のせいか、まだ目の前がくわんくわんしてる感じ。
郁子さんとの対応がいっぱいいっぱいだ。
「あら、いちいち電話なんかしなくても……ちょっと待っててね」
そう言って郁子さんは栄太君を布団の上に座らせて部屋を出て行った。
栄太君がハイハイをして私の前にやってくる。
「うう~」
正座している私の太股に両手を置いて、体重を預けてきたので、私は栄太君を膝の上に座らせた。
栄太君は上機嫌に脚をバタバタさせている。


