栄太君は私にぴったりとくっついてきた。
私は栄太君の背中をトントンと叩いた。
そうして少しすると、急に栄太君がズシッと重くなった気がした。
どうしたのかと、栄太君を覗き込むと、栄太君はスヤスヤと寝息をたてて眠っていた。
「寝ちゃったみたいね」
郁子さんも栄太君を見て言った。
「はい」
「向こうの部屋にお布団敷くから、寝かせてあげてくれる?」
「はい」
郁子さんがリビングを出て行くのについて行って、廊下を挟んだ部屋に入ると、和室だった。
郁子さんが隅のほうに畳まれていた子供用の布団を部屋の真ん中に敷いた。
「はい。雛子ちゃん」
私はベッドの脇に座って、そっと栄太君をそこに寝かせようとした。
「んん~……」
栄太君が唸り声を上げる。
起しちゃったかな? と思って動きを止めると、また静かに寝息をたてている。
そっと寝かせて、体を離そうとした。
「んん~……ふえぇ」
今度は愚図りだした。しかも、またTシャツの胸元をしっかりと握っていて離れない。
慌ててまた動きを止めると、大人しく眠っている。
「あら……離してくれないみたいね」
ちょっと苦笑しながら郁子さんは言った。
「少しの間、添い寝してあげてくれる? 雛子ちゃんも楽な姿勢になっていいから」
「はい」
今離れたら絶対に栄太君は起きるだろうし、それしかないだろう。
私は言葉に甘えて、栄太君に被さっている状態から栄太君の隣に横になった。
郁子さんが、栄太君の上に、小さなタオルケットをかけた。
「雛子ちゃん、冷えない? 何かかけるもの持ってきましょうか」
「いえ、大丈夫です」
人の家に来ておいてそこまでしてもらうわけにもいかないし、そうすると本当に眠ってしまいそうだから断った。
「そう? ……あ、もうこんな時間。お買い物行かないと……」
郁子さんが言うので時計を見ると、もうそろそろ四時になるところだった。
「あ、どうぞ。行ってきて下さい。私、栄太君のこと見てますから」


