「……すみません」
本当にもう、自分が情けない。
「いいのよ。私が頼んだんだし。こちらこそごめんなさいね。お隣さんが話し出そうとしたもんだから」
郁子さんは笑顔を作りながら、栄太君の服のボタンを留めていく。
さっき、衝撃的なことが起きた。
栄太君のオトコノコの印を刺激してしまったせいなのか、私の手際が悪かったせいなのか……
栄太君は、思いっきりお漏らしをした。
それが勢いよく、私のTシャツに直撃。
我も忘れて絶叫してしまった。
ちょうど現れてくれた郁子さんが、慌てた様子で対処してくれて、私にTシャツを貸してくれて、結局栄太君のオムツも郁子さんが替えてくれた。
何やってんだろ、私。
余計なことをしようとしてバチが当たったっていうの?
「はーい、栄ちゃん、すっきりしましたねー」
ボタンを全部留めた郁子さんは、栄太君に笑いかけながら体を抱き起こしてその場に座らせた。
すると、栄太君はそのまま前に手をついて、ハイハイをする。
そして私の目の前にやって来た。
「うう~」
正座している私の膝に手をついて、体を乗せようとしている。
「なに? 抱っこ?」
また抱っこをせがまれているのかと思い、私はとりあえず栄太君を抱き上げて膝の上に向かい合うように座らせた。
「う~ぅ?」
栄太君は一生懸命腕を伸ばして、私の顎の辺りに触れた。
「え? 何?」
「やっぷ!」
理解不能の言葉を発しながらペタペタと顎やほっぺたを触ってくる。
「栄ちゃん、雛子ちゃんにごめんねーって言ってるみたいね」
郁子さんがそう言って笑った。
そうなのかな?
栄太君を見てみるけど、栄太君はただきょとんとしている。
……まあいっか。
まだ赤ちゃんだし、可愛いから許す!


