彼と私と秘密の欠片


あー。ホント栄太君は可愛い。

……慶太君と違って。


私は慶太君に視線を向けた。

慶太君はもうケーキを食べたみたいで、テーブルの上のクッキーをいくつか取ってそれを食べていた。


お皿はケーキの屑一つ乗っていなくて、綺麗に食べてくれたみたいだった。


……まあ、根は可愛いんだろうけどね。



それから、郁子さんと雑談をしながら過ごしていた。

たまに栄太君が何か言って(?)きたりして、笑いながら。

慶太君は相変わらず、郁子さんの言うことには答えるけど、私に対しては何の反応もない。

残念だけど、もうそういう子だと思ってやり過ごすのが一番なのかな。


「あ、栄ちゃん、おむつかえなきゃね」

膝の上で栄太君を抱いていた郁子さんが、栄太君のお尻のあたりを触って言った。


「ちょっとごめんね、雛子ちゃん」

郁子さんは席を立ってリビングに移動する。


栄太君を、窓の近くに敷いてあった小さな布団に寝かせて、服のボタンを外している。


――ピンポーン


インターホンが鳴った。


「あ。もう、嫌なタイミングねー。栄ちゃん、ちょっと待っててねー」

郁子さんは外したボタンをもう一度留め直した。


「……あ、あの。私やりましょうか」

私は、何気ない気持ちで口にした。


「え? いいの?」

郁子さんは目を丸くしてこっちを向いた。


「はい。親戚の子供のとか替えたことがあるんで、やり方は分かると思います」


「本当? じゃあお願いしようかしら」


――ピンポーン

またインターホンが鳴った。


「ああ、はいはい。じゃあ、雛子ちゃん、お願いね。そこにおむつとか一式あるから」

郁子さんは、部屋の片隅に置いてある大きめのエコバックを指さして言い、慌しく部屋を出て行った。