何? 珍しく素直じゃない?
慶太君は、この間私がオムライスを作った時には、同じように言われても、黙々と食べてたのに。
「やっぱり雛子ちゃんって料理上手いわねー。尊敬しちゃう」
「いえ……そんなこと……」
ふと慶太君を見ると、慶太君は郁子さんが言ったのを聞いたのと同時に、動きが止まる。
そして私をチラッと見た。
目が会った途端、急に不機嫌そうな顔になった。
……あ、そう。そういうことね。
多分、慶太君はこれを私が作ってきたケーキだとは思わなかったのね。
だから、普通に美味しいって言ったのね。
ていうか、私が作ったってだけでそんな嫌な顔しなくてもいいじゃん。
……でもまあ、手作りだって分からなかったってことだし、不機嫌な顔しながらも食べてくれるから、それは嬉しいけど。
何ていうか、素直じゃないなあ。私にだけ。
そこまで嫌がらなくてもいいじゃん。
小さくため息をついて栄太君の方を見ると、郁子さんが栄太君にジュースを飲ませていた。
飲ませる、といっても、ふたがついているコップに刺さっているストローを栄太君がくわえて飲んでいて、郁子さんがそのコップを支えている、という感じだ。
「あれ。哺乳瓶じゃないんですね」
この間誠司さんの家に行ったときには哺乳瓶で飲ませていたのを思い出して言った。
「ああ、最近ね、ちょっとずつでも飲めるようになったから。もうそろそろ哺乳瓶は卒業させないといけないからね」
「そうなんですか」
赤ちゃんの成長の過程とか進度というものをよく知らないから、そういうものなんだと思った。
栄太君は、まだちょっとストローには慣れていないようで、この間の哺乳瓶の時とは打って変わってコップの中のジュースはちびちびとしか減っていない。
それでも一生懸命にストローで吸ってる姿も愛らしい。


