彼と私と秘密の欠片


「こっこ」

栄太君が私の足をペタペタと触りながら言った。


「え? こっこ」

通じるわけもないけど、思わず聞き返した。


「こっこ! こっこっこー」

そう声を発しながら栄太君は私に手を伸ばして上下に弾んでいる。


……可愛い。でも一文字多いよ、栄太君。


その必死さに負けて、私は栄太君を抱き上げた。膝に座らせるようにして抱くと、栄太君は嬉しそうに笑った。


こんな風に笑った顔は、初めて見た気がする。


笑顔も勿論可愛くて、私は更にメロメロになった。


ほっぺたを指でつつくと、手足をバタバタさせる。

またつつくと、声を上げて笑った。


やばい。可愛い。


今度は栄太君が、私の胸を触ってきた。

ん? またこの前みたいにおっぱい探してるの?

こんなこともあろうかと、今日はTシャツを着てきたから、引っ張られても大丈夫だけど。


もぞもぞと動くと、栄太君は私のTシャツの胸元を掴んでぴったりとくっついてくる。


ちっちゃいなぁ。

ぎゅっと握りしめられている手を見てしみじみ思う。


こんなにちっちゃいのに、しっかりと力があって、こんなにちっちゃいのにずっしりと重みがある。


人形のようにちっちゃいけど、ちゃんと人間なんだなあと、当たり前だけど思ってしまった。



「慶ちゃん、おやつよ」

郁子さんがお盆を持ってキッチンから顔を覗かせた。


「雛子ちゃんも、お茶入ったからどうぞ」

にっこりと笑顔を向けて郁子さんは言ってくれた。


「はい。ありがとうございます。あの、栄太君は……」

どうしたらいいのかと郁子さんに尋ねた。


「あら、栄ちゃん、お姉ちゃんに抱っこしてもらっていいわねぇ。……栄ちゃんも連れてきてくれる? 栄ちゃんの分のおやつもあるから」


「はい」

私は栄太君を抱いて立ち上がって、テーブルに向かった。