まさか、こんなに早くここに来ることになるとは。
前に来た時は、もう二度と来ることはないだろうと思ってたのに。
それもちゃんとお呼ばれしてだし。
確かに、来てもいいとは思ってたけどさ、やっぱりそう思ってたのは『そのうち』のことだし。
私は大きく深呼吸をした。
よし!
意を決してインターホンを押す。
ピンポーンと小さく聞こえた。私はドキドキしながら待つ。
「はい」
インターホンから郁子さんの声が聞こえた。
「ぅあっ……えっと、島……雛……しまこ……じゃない。島田雛子です!」
シュミレーションしていなかったので、変な返事になってしまった。
苗字だけ名乗ればよかったのか、名前だけでよかったのか……
苗字だけだと伝わるか分からなかったし、名前だけだと馴れ馴れしい感じだし、結局フルネームで言ったけど。
ていうか、しまこって!
「あ、はいはい。今行くわねー」
郁子さんは特に何も思わなかったらしく、完全スルーでそう言った。
数秒経つと、玄関から郁子さんが出てきた。
「雛子ちゃん、いらっしゃい」
にっこりと笑顔で出迎えてくれる。
「お久しぶりです。今日はご招待ありがとうございます」
シュミレーションした通りに言って、頭を下げる。
何か堅苦しかったかな?
「あらあら。ご丁寧にありがとう。さあ、上がって」
郁子さんは笑顔で返してくれた。
「はい。お邪魔します」
私は促されるままに家の中に入った。


