「また今度行ってやってよ。凄い喜ぶと思うから」

誠司さんの言葉に、ちょっと躊躇う。


「いいの? 私なんかが行っても」


未だに私、誠司さんの何? っていう、中途半端な立場だし……特に用もなく行くっていうのも気が引ける。


「うん。全然いいよ。ていうか、そうじゃないと母さんがうるさいくらいでさ。それより雛ちゃんの方が迷惑だよね」

苦笑混じりに誠司さんは言った。


「ううん! そんなことはないよ。むしろ嬉しいから」

首を大きく横に振って否定する。


人に好意を示してもらえるのは嬉しい。それが好きな人のお母さんなら尚更。


「じゃあ、今度、近いうちにお邪魔させてもらおうかな」

社交辞令なんかではなく、私は本心から言った。


もし、向こうが快く招いてくれているのなら、是非行きたい。

この間は緊張してばっかりだったけど、今度は楽しんで、ちゃんと話とかできたらいいな。



……なんて、軽い気持ちで思ってたら、案外早くその『今度』はやって来た。


「母さんに言ったら、具体的な日付のことまで聞かれちゃってさ」

そうやって少し申し訳なさそうにも見える誠司さんづてに、郁子さんと会う約束を取り付けた。




そして今日、約束の日。


私の学校とかバイトの都合と、郁子さん自身の都合もあって、結局日曜日になった。

世間一般では休日だけど、誠司さんは仕事だから、慶太君と栄太君もいるらしい。


ていうか、緊張するんですけど。


約束の三時ぴったりに誠司さんの実家の前に着き、インターホンの前で私は躊躇する。