私が誠司さんの事情を知って以来、誠司さんはこんな風に、子供のこととかを会話の中に表してくれるようになった。
そういうことをしてくれるようになったせいか、最近の誠司さんは、前より喋るようになった気がする。
だから最近は、会話が盛り上がるようになった気がするし、前まで感じていた、誠司さんが一線引いてるようにも感じなくなった。
それは、誠司さんが私に対して心を開いてくれたようで、すごく嬉しかった。
「ねえ、誠司さん。慶太君って何が好き? やっぱり、カレーとかオムライスとか?」
「ん?」
誠司さんは首を傾げる。
「私、今度こういうお店調べておくから。美味しくて、子供を連れてきても楽しめるところ」
私が、何か誠司さんのためにできること。
今までは誠司さんのことを知らなかったから、出来ないことばっかりだった。
でも今は、こんな些細なことでも、できることを探し出せる。
「ありがとう、雛ちゃん。慶太はね、カレーとかオムライスもそうだけど、ハンバーグとか、から揚げとか、子供が好きな定番のものは何でも好きだよ」
誠司さんが、微笑みながら私のすることを受け入れてくれるようになったのも、本当に嬉しい。
「分かった。探しておくね」
私は、秘密を打ち明けてくれてからの誠司さんのことを、もっと好きになった気がする。
「……そういえば」
誠司さんがふと思い出したように言った。
「最近、うちの母親が雛ちゃんのことばっか言ってくるんだよね」
「郁子さんが?」
誠司さんの言い方が微妙で、私は不安になる。
私、何かしたかな……?
「うん。また遊びにくるように言っときなさいってさ。母さん、雛ちゃんのことすごく気に入ったみたい」
そう言って、誠司さんはハハッと笑う。
何だ、いい方の意味か。
そういえば、娘ができたみたいって言ってたからな。
でも、嬉しい。
理由は何であれ、好きな人のお母さんに気に入ってもらえるって。


