なんだかもう、我がままだな、私。
諦めたいのに、諦められない……
往生際が悪いっていうか……
その時、携帯が振るえ出した。
私は思わず起き上がった。
来た! 誠司さんから……
画面には、誠司さんの名前が表示される。
え? でも、メール……じゃない! 電話だ!
嘘!? 夜には絶対に電話したことない誠司さんが……私に電話!?
信じられない気持ちで一杯だったけど、携帯は誠司さんの名前を表示したまま、震えている。
とっ……とにかく出なくちゃ!
私はバクバクと心臓が鳴っているのを落ち着けようと深呼吸を一回して、通話ボタンを押した。
「……もしもし」
声のトーンをどうしたらいいか分からなくてとりあえず出した声は、物凄くテンションの低い声になってしまった。
「あ……もしもし、雛ちゃん?」
電話の向こうから、誠司さんの声が聞こえて、当たり前のことなのに、私は物凄く嬉しくなってしまった。
「今、大丈夫だった?」
「うんっ。大丈夫」
単純だな、私って。誠司さんの声を聞いただけで、テンションが上がった。
「そ……それで、どうしたの?」
って。何を白々しいことを聞いてるんだろう。
誠司さんが今日連絡をくれた理由なんて、一つしかないのに。
「あ、うん。あのさ……今日、俺の実家に行ったんだってね。母さんに聞いた」
まずそんな言われ方をして、私は緊張した。よくも悪くもとれる言い方だったから……
「なんか、母さんが無理矢理連れてったんだって? ごめんね。変な気を遣わせちゃったみたいで……」
続いたのがそのことで、私は少し安心した。
「ううん! 私の方こそ……勝手にお邪魔しちゃって」
「いや……うちの母さん、強引だからしょうがないよ。それにあの人、よく喋るでしょ。何も言えなかったんじゃない?」
誠司さんの苦笑いしてる顔が思い浮かぶ。
確かに、郁子さんはよく喋る人だった。私が会った瞬間から、ずっと喋ってたような気がする。


