彼と私と秘密の欠片




21時24分。

私は携帯の待ちうけ画面を、ひたすら凝視していた。


誠司さん、スムーズにいってたら、もう家に着いてるよね。


昨日の感じだとしても、もうとっくに家に着いてるはずだし。

おとといまでだって、これくらいの時間を計ってメールしてたわけだし。


だけど、誠司さんからのメールも電話も一切なし。


……って! 別に期待してるわけじゃないんだけど!


でも、今日誠司さんの実家に行ったわけだし、隠そうとしても、郁子さんが言ってしまうはず。

それにオムライスだって一応、誠司さんの分まで作ったんだし。


それについての反応とか、あったらいいなー、なんて思ったりなんかしちゃったりして……

だから期待とかじゃないんだけどね!


期待はしてない……けど、じっと一時も画面から目を離せない。



……一昨日までの私も、こうだったな。


メール送って、返ってくるまでの時間がもどかしくて。

ずーっと画面から目を逸らせなかった。


そういえば、夜のこの時間帯は、誠司さんは一回も電話してきたことなかったな。

私が電話しても、出ないし、それに返ってくるのもいつもメールだった。


今思えば、子供がいるから、電話はできなかったんだろうな。



私はベッドに寝転がって、携帯を閉じた。


私はどうしたいんだろう。

誠司さんにどうして欲しいんだろう。


南の言うとおり、やっぱり誠司さんのことは諦めて、次にいった方が無難だし、きっと今よりも楽に幸せな恋ができると思う。

だけど、どうしてだろう。

頭では分かっているのに、心はそれをしたがらない。

諦めることを、嫌がってるみたいだ。


今だって、きっと誠司さんは、私に変な期待を持たせないために、もう連絡なんてしてこないかもしれない。

私が、無理なら突き放して、って言ったから。


きっと、それが私にとってもいいことだ。


だけど、もしこのままなんの連絡もないままだったら、きっと悲しいんだろうな……