彼と私と秘密の欠片



リビングから一直線に玄関に向かい、外に出る。


時枝家を後にすると、どっと疲れがでた。


つい、大きなため息が出てしまう。


何だか、すっごい緊張した。


居心地のいい雰囲気のお家だったけど、誠司さんの実家だし……誠司さんの両親とも顔合わせちゃったし……


まさか、きのうの今日でこんなことになるなんて思わなかったよ。


郁子さんも剛司さんも、私が誠司さんに告白して振られてるなんて思わないだろうなぁ……

ていうか、二人とも私のことどう思ったんだろ。本当に誠司さんの店の常連さんってだけ?


……まあいっか。どう思われたにしたって、実際の私と誠司さんの関係だって、私にもよく分からないんだから。


今日はもうさっさと帰ろう。


「あ」

自分の家へと足を向けた瞬間。


牛乳買うの忘れてた。


そのことを思い出して、私は反対方向に足を向けなおした。


もうスーパーまで戻るのは面倒くさかったから、結局、近くにあったコンビニで牛乳を買って、家に帰った。