私が椅子に座ったところで、慶太君と剛司さんが戻ってきた。
慶太君と剛司さんは並んで座るようで、よじ登るようにして座ろうとしている慶太君の椅子を剛司さんが押さえてあげて、ちゃんと座れたところで剛司さんも椅子に座った。
「じゃ、食べましょ。いただきます」
郁子さんがそう言うと、慶太君も手を合わせて『いただきます』と言い、剛司さんも小さく言って、スプーンを取った。
「栄ちゃーん。栄ちゃんもいただきますしましょうねー」
郁子さんだけは、栄太君の離乳食の入った器を手にとって栄太君に話しかける。
栄太君は、じっとその器に釘付けで、やっぱり食いしん坊ぶりを発揮していた。
「うん。美味しい」
一番最初に言ったのは剛司さんだった。
「本当ですか?」
「うん。正直こういうのは油っぽい感じがして好きじゃないんだけど……でも、全然そんなことないし。たまにはいいな。こういうのも」
そう言って、また一口二口と食べ進めてくれる。
「美味しいな、慶太」
剛司さんが隣に座る慶太君に話しかける。その様子は、昨日の誠司さんとそっくりだった。
「……」
慶太君は、何も答えず黙々とオムライスを食べている。
「こら、慶太。せっかくお姉ちゃんが作ってくれたんだから、何か言いなさい」
「そうよ、慶ちゃん。慶ちゃん、オムライス食べたかったんでしょ? 雛子ちゃんにちゃんとお礼言って」
ぶすっとしている慶太君に、剛司さんと郁子さんが諭すように言う。
それでも慶太君は黙ったままだ。
「慶太……」
「あ、いえ、いいんです。私が急にお邪魔して作ったんですし」
慶太君に対して少し厳しく言いそうになった剛司さんを私は遮った。
「いや、でも頼んだのはこっちなんだし……」
「いえ、本当にいいんです」
剛司さんが申し訳なさそうにするのを、逆に私も申し訳なく思う。
何だか、こういう小さなことにも気を配るところは、誠司さんにそっくりだなぁ。


