聞いてしまってから、私は焦った。
「あ、その、誠司さんだけってわけじゃなくて……お兄さんの奥さんとか……郁子さんにとっては、娘みたいなものじゃないのかなって、思って」
我ながら苦しい言い回しだった。
私は何を聞きたいのだろうか。
でも、なんとなく、気になったんだ。
誠司さんの前の奥さんは、この家で一体どんな位置に居たのか。
そんなことを私が聞いてもどうしようもないのに。
私とは、全く違うのだから比べようなんてないのに。
「うーん……そうねぇ」
郁子さんは、私の疑問に対して何も思わなかったのか、思い出そうとしているようだった。
「そう言われると、娘って感じじゃないのよね、どちらかと言うと。やっぱり、お嫁さんだから。向こうにとっては私は姑だから気を遣うんだろうし、娘かっていうと違うわねぇ」
郁子さんの意見に、なるほど、と思う反面、私は? と思う。
私だって、誠司さんのお母さんだから、気を遣ってるつもりなんだけど……それでも娘?
……いやいや、何を張り合ってるんだ、私。
郁子さんは姑じゃないし。私だって、嫁ってわけじゃないんだから。
私は一体どうありたいんだろう。自分でも分からなくなってきた。
「それに、お嫁さんとはあんまり並んで料理することなんてないのよね。お兄ちゃんのとこは離れて暮らしてるから年に何回か帰ってきた時くらいだし、誠司なんかは、二回とも結婚してたのは、短い間だったしね」
誠司さんのことを言った時、郁子さんの表情は複雑なものになった。
「すみません……」
郁子さんが何を思ってそういう顔になったのかは分からない。
でも、私なんかが聞いてよかったことじゃないのは分かる。


