「やっぱり女の子はいいわね。なんだか娘ができたみたい」
ふふっと笑いながら、郁子さんは言った、
同時にフライパンがコンロに置かれた。
「うちはねえ、誠司に聞いてるかもしれないけど、男ばっかりなのよね。誠司の上にもう一人お兄ちゃんがいて……お兄ちゃんは、結婚して、今は仕事の都合で関西の方に住んでるんだけどね」
誠司さんにお兄さんがいるって話は、聞いたことがあった。
何気ない話の流れで、確か、私が私のお兄ちゃんの話をした時に、誠司さんに兄弟がいるのかどうかを聞いて、それで教えてもらった気がする。
結婚してて関西の方に住んでるっていうのは、初耳だけど。
「それだから、昔から男ばっかりだったし、今も、慶ちゃんも栄ちゃんも男の子で、しかも、お兄ちゃんのところにも子供が一人いるんだけど、その子も男の子で……女の子は一人もいないのよね。まあ、孫はどっちでも可愛いからいいんだけど」
最後の一言は、優しい顔をして言っていた。
さっきは、旦那さんのことをジジバカなんて言っていたけれど、郁子さんも孫にはよっぽど甘いんじゃないかな。
「でも、すごいですよね。そこまで男の人ばっかりだと。……そういう家系なんですか?」
「そんなことはないと思うんだけど……私も主人も兄弟は女の方が多いくらいだし……むしろその反動なのかしらね。でも、私はやっぱり一人くらいは女の子が欲しかったわぁ。こんな風に、並んで料理とかできたら素敵だもの」
郁子さんは、私のことを本当に娘を見ているかのようにじっと見つめている。
それはそれで嬉しい。
でも……
「……誠司さんの前の奥さんとかは、娘って感じじゃなかったんですか?」


