彼と私と秘密の欠片


とりあえず、この場をまかされてしまった私は、冷蔵庫の中を拝見させていただくことにする。


「失礼します……」

何となく何か言わないといけない気がして、とりあえず小さい声でそう言って野菜室を開けた。


ここからは、オムライスに入れられる玉ねぎを取り出した。

チルド室を見てみるとハムがあって、それも材料に加える。

冷凍庫の中も覗かせてもらうと、冷凍のコーンが入っていたから、それも使わせてもらう。


頭の中で出来上がりを考えてみて、私はケチャップを取り出した。


オムライスの中身は、やっぱり普通のケチャップライスにすることにする。

それが一番無難だし、慶太君が食べたいと言うくらいだから、あまりややこしいものより、定番の方がいいんじゃないかと思ってだ。


「えっと……まな板と包丁は……」

流石に台所のことまではわからないので、郁子さんに尋ねた。


「はいはい。これ使って」

郁子さんはすぐにまな板と包丁を収納から出して用意してくれた。


「あ、刻むのね。じゃあ、皮剥くわ」

郁子さんが玉ねぎをとっておしりの部分を切って、手早く皮をむく。

流石主婦で、その手つきは慣れている。

綺麗に皮を剥かれた玉ねぎが、まな板の上に置かれた。


「あの……あたしがいうのもなんですけど、本当に料理苦手なんですか?」


「苦手よお。そりゃあ、何年も主婦やってるから野菜切ったりはできるし、普段のおかず作ったり、人並みにはやれるわよ? でも、それで上手いかどうかは別よ。オムライスとか、滅多に食べないものとかなんか本当にできないんだから」

郁子さんがそう言いながら、コンロの下の収納を開けた。


やっぱり主婦は主婦で違うんだな。

私は元々料理が好きだけど……主婦だったらそんなの関係ないからか。


そんな風に思いながら、私も自分の作業をする。